【免責事項・注意事項】
本記事は薬剤師をはじめとする医療従事者を対象とした学術・実務情報です。個別の治療方針や処方鑑査、服薬指導に関しては、必ず最新の添付文書およびメーカー公式情報をご確認ください。
2026年10月14日に薬価収載されたグラクソ・スミスクラインのB型慢性肝炎治療薬「ヒブサーゴ皮下注150mgシリンジ(一般名:ベピロビルセン)」。
これまでの核酸アナログ製剤(エンテカビルやテノホビル等)による「ウイルスの増殖抑制」にとどまらず、免疫抑制の元凶であるHBs抗原そのものを激減させ、治療終了後も再燃しない「機能的治癒(Functional Cure)」を目指す世界初のアンチセンス核酸医薬(ASO)として臨床現場から大きな注目を集めています。
さらに本剤は収載と同時に「在宅自己注射指導管理料」の対象にも追加されました。
処方箋応需時の鑑査、自己注射の手技指導、門前医師との連携にすぐ役立つよう、「作用機序の図解」「添付文書の要点(核酸アナログ併用・特殊スケジュール)」「自己注射指導のピットフォール」をコンパクトにまとめました。
1. 【図解】30秒でわかるヒブサーゴ(ベピロビルセン)の作用機序
まずは、従来の核酸アナログ製剤との違いと、ヒブサーゴがB型肝炎ウイルス(HBV)を封じ込める中枢メカニズムを図解で整理します。
作用機序のサイエンス(なぜ機能的治癒が狙えるのか?)

- 従来の病態(左側): 肝細胞の核内に侵入したHBVのcccDNAから、ウイルスタンパク質を作るための各種HBV RNAが転写されます。ここから大量のHBs抗原(表面抗原)が産生・放出され、これが生体の免疫応答(T細胞やB細胞)を麻痺・疲弊(免疫疲弊)させ、持続感染を成立させています。
- ヒブサーゴの作用(右側): ベピロビルセンは、すべてのHBV mRNAに共通して存在する領域に特異的に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)です。
- mRNAの分解: 結合した二重鎖を細胞内の酵素「RNase H」が認識し、HBV RNAを特異的に切断・分解します。
- HBs抗原の枯渇: ウイルス増殖の阻害だけでなく、免疫を麻痺させていたHBs抗原の産生そのものを強力にストップさせます。
- 宿主免疫の再賦活: HBs抗原が消失することで、眠っていた患者自身の免疫機構が再び目覚め、残存ウイルスを自力で排除(機能的治癒)できるようになります。
2. 【添付文書要点】ヒブサーゴ皮下注の基本スペックと確定薬価
| 項目 | 内容 |
| 販売名 | ヒブサーゴ皮下注150mgシリンジ |
| 一般名 | ベピロビルセン(bepirovirsen) |
| 製造販売元 | グラクソ・スミスクライン株式会社 |
| 効能・効果 | B型慢性肝炎における機能的治癒 |
| 確定薬価 | 150mg1mL1筒:183,015円(1回2筒=約36.6万円) |
| 投薬期間制限 | 新薬14日投与制限あり(2027年10月末日まで) |
| 在宅自己注射 | 在宅自己注射指導管理料の算定対象 |
3. 処方鑑査で最も注意すべき「用法・用量」の鉄則
ヒブサーゴ皮下注は、投与初期と維持期でスケジュールが異なり、何より「他剤との併用必須ルール」が存在するため鑑査には細心の注意が必要です。
【用法・用量】
通常、成人にはベピロビルセンとして**1回300mg(150mgシリンジ×2本)**を皮下注射する。
- 投与1週目及び2週目: 3〜4日毎に週2回(計4回)
- 投与3週目以降24週目まで: 週1回
- ※本剤の投与に際しては、必ず核酸アナログ製剤と併用すること。
鑑査・指導における3大ピットフォール
- 【最重要】核酸アナログ製剤(ETV/TDF/TAF等)の併用必須
- 本剤単独での投与は認められていません。エンテカビル(バラクルード等)やテノホビル製剤を服用中の患者への「上乗せ併用」が絶対条件です。処方箋に核酸アナログが漏れていないか必ず確認してください。
- 「初期2週間の週2回投与(負荷投与)」と14日制限の兼ね合い
- 1〜2週目は「週2回(1回2筒=計4筒/週)」投与されます。新薬14日投与制限下では処方可能本数に上限があるため、投与予定日と来院スケジュールに齟齬がないか処方日数の鑑査が必須です。
- 「ALTフレア(一過性の肝機能値上昇)」のモニタリング
- 本剤投与中に、免疫応答の賦活に伴う急激なALT上昇(ALTフレア)が高頻度で発現します。これは薬効発現の兆候でもありますが、劇症化を防ぐため定期的な肝機能検査(AST/ALT/総ビリルビン)の実施状況を確認します。
4. 在宅自己注射指導管理の実務チェックリスト
患者が自宅で自己注射を行う場合、薬局・院内での指導ポイントは以下の通りです。
- 保管方法: 遮光・2〜8℃(冷蔵庫)保存。凍結は厳禁。使用前の室温復帰(直射日光を避け約30分置くことで注射時の疼痛を緩和)。
- 投与部位: 腹部または大腿部(同一箇所への連続投与を避け、毎回場所を変える)。
- 廃棄物の管理: 1回の投与で「シリンジ2本」を使用するため、専用の廃棄ボトル(バイオハザード容器)を必ず交付し、医療機関または薬局での回収ルートを案内する。
5. 公式添付文書・関連リンク
最新の添付文書、インタビューフォーム、適正使用ガイドは以下の公式情報をご確認ください。
- PMDA 医療用医薬品 添付文書情報検索(公式)
- PMDA 医薬品検索:ヒブサーゴ皮下注
- ※「販売名」に「ヒブサーゴ」と入力して検索することで、最新の添付文書PDFが直接閲覧できます。
- グラクソ・スミスクライン(GSK)医療関係者向けポータル
まとめ:高額新薬の安全投与を支える薬剤師の役割
ヒブサーゴ皮下注は、生涯にわたる内服治療が必要だったB型肝炎患者にとって「治療終了(服薬からの解放)」という劇的な福音をもたらす可能性を秘めています。
一方で、1回30万円を超える超高額薬価や14日制限、自己注射手技、ALTフレア管理など、現場の薬剤師が担うべき安全管理と指導の役割は重大です。正確な知識を持って日々の処方鑑査に臨みましょう。


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